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2018.12.18

議論の中身を一目瞭然に表現するために

 仕事をしていると時々、ややこしい話をそれでもまとめて他人に説明しなくてはならない羽目に陥ることがあったりしませんか?個人が考えたことを表現するためのツールとしては、マインドマップやマンダラチャートなど、ビジュアルに訴える手法が人気です。さらに最近ではパワーポイント(マックならキーノート)の作図機能のおかげで、時間さえかければ込み入った話を一目瞭然に表現することができるようになってきました。ところが同じことをグループワークでやるにはどうすれば良いか?と言う部分では意外と進歩していなかったりします。

 古典的には表やグラフを使ったり、箇条書きにしたり、模造紙に小学生の壁新聞よろしくレイアウトしてみたりと、さまざまな工夫がありますね。ポストイットを模造紙に貼ってあれこれ組み合わせを変えてみる、といった手法はよく使われていると思うのですが、「グループ」ワークと「パーソナル」コンピューターが今一つ相性が良くないことも手伝って、この世界はなかなかアナログなまま取り残されている感じです。もう少し時代がニーズに追いついて来れば、巨大なタッチスクリーンが一般化するのかもしれませんが、今のところ模造紙・ホワイトボードとマーカーが絶滅しそうな気配はありません。

 でもデジタル化されていないからと言って、グループワークを一目瞭然に表現することの重要性が否定されているわけではありませんで、いわゆるブレーンストーミングのプロセスを後から共有するなど、できたら良いのにというニーズは確実に存在しています。人的に余裕のある職場であれば、パソコンを抱えた書記を一人立てる、という方法もあると思いますが、常にそうできる職場は必ずしも多くはないでしょう。

 ネットワークを使って、議論しながら皆が自身のパーソナルデバイスに向かって同じ素材を加工しあう、というソリューションもないわけではありませんが、やはり一つのホワイトボードに向かって議論するのとでは刺激の度合いが違ってきます。

 議論を煮詰めながら、同時に一目瞭然の形に表現するための手法として、その昔KJ法やNM法という「発想法」が人気を博した時代がありました。NM法は連想による発想を軸としますが、ビジネスで使うKJ法は議論で出された「似たもの情報」の大意要約を繰り返し、情報相互の位置関係をビジュアルに表すことによって「要は何が話されたのか」を表現しようとする手法です。

 全体観を押さえながらも「要は何が話されたのか」を煮詰めて共有できるという部分において、デジタルなソリューションとは一味も二味も違う長所を持っているKJ法ですが、人知に負う部分が大きいことに加えて模造紙やラベル、ゼムクリップなどのツールがとってもクラシックなこともあってか、半ば古典芸能化した感があります。いわば算盤と同じような運命をたどっている、ということでしょうか。

 手法としてのKJ法は使われなくなったかもしれませんが、大意要約を繰り返すことで要旨を明らかにしてゆくというアプローチそのものは決して陳腐化したわけではありません。むしろデジタルの世界でこそ、分かりやすく資料をまとめる上でのコツとして、その重要性は増しているのではないかと思います。大意要約に長けたモデレータがまとめるグループワークは、その品質においてそうでないグループのものとは全く違った輝きを見せてくれます。

 あなたの会社では、社員の大意要約の能力を重視していらっしゃいますか?

2018.12.11

弱みは消えるよ、簡単に

先週に引き続き、SWOT分析がらみのお話をひとつ。この手法を用いる場合に、企業の経営環境を踏まえた戦略案を構築するため、強み(S)、弱み(W)、機会(O)、脅威(T)の4つの要素を導き出すという手順は変わらないのですが、その要素は経営の立ち位置によって大きく変化する場合があることをご認識いただきたいのです。なぜそうなるのか?について少し詳しくお話します。

私は以前、海外で仕事をしていたことがありまして、ドイツ人の上司、そのまた上司がフィンランド人、同僚もペルー人、スペイン人と、豊かなダイバーシティに恵まれた職場環境だったのですが、いずれも英語以外の主要言語を一つ以上話せる人たちでした。そうすると「英語しかできない」ことは、潜在的な「弱み」になります。その後日本に戻って仕事をする中で、「英語ができる」ことは明らかな「強み」になりました。ことほど左様に、勝負するマーケットが変わればそれまで強みだったものが弱みになり、その逆もまた起こりうるということですね。

それと同じく、「機会」や「脅威」についても、ある日突然消えてなくなったりすることがあります。具体的には規制がかけられたり、かけられる予定だった規制が行政側の都合で変更になったり、例外規定が出来たりするパターンがあります。太陽光発電の固定価格買い取り制度の見直しなどは、典型的な機会の消滅だったのではないでしょうか。

外的要因による変化以外にも、経営の目指すところが変化すると、それにつれて強みや弱みが出たり消えたりする場合があります。それまでジュニア育成で結果を出してきた都会のテニススクールが、少子高齢化に対応するためシニア向けのプログラムを充実させるという経営方針の転換を行う場合、ふつうシニアはハードなテニスをするわけではないため、テニスがとても強くてジュニア選手があこがれるようなハードヒッターがコーチとしての強みを失うケースがあったりします。逆に、テニスの腕はそこそこでも、人当たりが柔らかく面倒見の良いコーチがシニアに評価され、それがスクールの強みとして脚光を浴びる、というような展開にもなり得るのです。

もうお分かりかと思いますが、SWOT分析は経営を取り巻くさまざまな事情の変化によってとても移ろいやすいものである、ということです。この手法をよりよく活用するためには、その特性を良く理解して、定期的な中身の洗い替えをすることが最も有効なのです。少なくとも2年に一度くらいはゼロベースから見直す形で分析をやり直すことによって、変化に適応した戦略を維持できるようになります。SWOT分析は一度やったらそれでおしまい、というわけではないことを、この機会にしっかりとご認識ください。

あなたの会社では、経営環境の変化に対応してタイムリーに戦略を見直していますか?

2018.12.04

SWOT分析がもたらす発想の力とは

 ビジネスコンサルティングの世界では、ややもすると手垢にまみれた感のあるSWOT分析ですが、正しく使えば依然として実にパワフルなツールであることに疑問の余地はありません。ただ残念なことに、用語解説などの簡単な説明資料にはよく「企業の内部環境における強み(S)・弱み(W)および外部環境における機会(O)・脅威(T)を抽出する」という説明とともに4象限の図だけが示されていたりするのですが、これでは全く分析の用に足りないのです。では何をどうすれば良いのか、あなたはこの使い方をご存知でしょうか?

 いくつかの異なるアプローチがあるようですが、最も一般的なものの一つはクロス分析と言って、「強みを機会に投入すると何ができるか」「弱みで機会を逃がさないためには何をしなくてはいけないか」「強みで脅威を回避するためにできることはなにか」「弱みで脅威を増幅させないためには何をしなくてはいけないか」という4つの視点に基づいて戦略案を策定する、という使い方です。

 これだけでも十分に強力なツールなのですが、あまり言われない話ながら、SWOT分析(のクロス分析)を行う上でその結果をさらに強力なものにするためのコツがあります。それは経営理念・経営目標を再確認したうえで分析に臨むという段取りを踏むことなのです。

 こうすると、導き出すべき戦略案が何のためのものなのか、について参加者の理解にブレが少なくなります。そもそも、企業は何のために存在しているのか?そして戦略は何のために必要なのか?このあたり、本来は自明であるべき命題でありまして、それは全く経営理念の実現と経営目標の達成のため、以外の何物でもないはずなのです。いや、自分の会社は違う、という方がいたら、実はむしろそちらの方が大変かもしれません(この件は別の回にじっくり論じたいと思います)。

 いま、明快な経営理念・経営目標を確認できたと仮定します。そのうえで経営環境から強み(S)・弱み(W)および機会(O)・脅威(T)の4要素を抽出できたとすると、組み合わせによってさまざまな戦略案を想定することが可能です。これを社内のグループ討議で実施したとしましょう。

 特に強み(S)については、普通の中小企業であっても1つや2つだけという例は極端に少なく、5つや6つはあたりまえ、どうかすると10以上も出てくる場合が多いのです。そこに今、仮に3つの機会があったとしましょうか。もしも強みが10あると、そこで吟味されるべき戦略案は10×3=30通りにもなってしまい、中身の確認だけでかなりの時間を費やすことになってしまいます。

 ここで思い出していただきたいのがパレートの法則と言う考え方で、全体の2割を占める要素が全体の8割に支配的な影響を及ぼすというものです。10種類の商品を扱っている店なら、そのうち2種類の商品だけで売り上げの8割を満たしている、というようなイメージです。

 それをSWOT分析にも当てはめると、たとえば10件ある強みでも、最も強い2つをチェックすれば全体の8割をカバーしたことになる、というふうに整理できるのです。それなら2×3=6通りの戦略案を比較検討することで足りるのですから、しっかりと時間を使って十分な検討をしていただけます。

 この分析が力強いのは、まず「強み(S)を機会(O)に投入する」仮説を吟味することによって、参加者と成功のイメージを共有することができる点です。しかも要素の数は通常だと強み(S)が最も多くなりますので、たとえパレートの法則を当てはめてもこのプロセスに掛ける時間が一番長くなります。

 議論はなんでもそうだと思うのですが、成功のイメージについて話す時間が長くなると、ポジティブな発想がさらに新しい発想を呼び、全体的な高揚感をさらに強めるということになる場合が多いのです。集団催眠、というと間違ったイメージにつながりかねませんが、みんなで一緒にやる気になる、というような雰囲気が醸成されるのは間違いありません。むしろそれこそが、社内でSWOT分析を実施することの重要なメリットなのです。

 あなたの会社では、グループでSWOT分析を実施してみたことがありますか?