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2018.09.04

上手く聞き出すための工夫とは

 経営者と社員の立場を比べると、その決定的な違いの一つに、日中どれだけ現場に立つ時間を割けるかという点があります。経営者たるもの、ポリシーとして現場最優先を掲げていても、よほどの零細企業を除いて自身が朝から晩まで現場に立てるケースは多くありません。そうなると、現場の情報については社員からの報告に多くを頼らざるを得なくなります。

 ところが、定型で求められている報告事項を除くと、必ずしも報告の仕方が上手くない社員も少なくありません。そういう場合に欲しい情報を上手く聞き出すための工夫があれば良いのに、と感じたことのある方も少なくないのではないでしょうか?

 ヒアリングした情報の『質』をチェックするために、よく使われる視点が「粒度・鮮度・確度」という3つのポイントです。まず「粒度」ですが、たとえば今週の売上がどうだったか、という質問に対しては、ざっくりと対前週で上がった・下がったを答えてくれるような場合と、日次変動を加味して水曜日と木曜日は目標達成率105%だったが、金曜日は台風で客足が鈍り、90%にとどまった、などと細かく答えてくれる場合があろうかと思います。

この例だと前者は粒度が粗く、後者は細かいと言えるのですが、何のためにこの情報が欲しいのか、その目的によって求める粒度も変わってきます。なので、単に「売上、どうだった?」と聞くよりは、「この前の台風の影響を知りたいんだけど、売上はどうだった?」などのように目的を併せて質問に織り込めば、粒度を合わせた回答を期待することができます。

 次に「鮮度」ですが、基本的には即時性の高い情報が良いとされている場合が多いです。そのため、報告する情報に加工が必要な場合は、社員にとって加工のための事務工期が意外なプレッシャーになる場合があります。いついつまでに何の数字を作らなければならないというようなタスクは、残業の理由としてよく聞くパターンではないでしょうか。ですので、経営者たるもの日常の報告に必要な数字についてはなるべく予め定例報告に織り込むように仕掛けを作り、社員の負担を軽減する配慮をしておく必要があります。が、どうしても、と言う場合には仕方ありません。社員に負担を強いた部分を慰労する機会を作る等して、貢献に報いるようにしてください。

 最後に「確度」についてですが、いわゆる裏付け取りをきちんとできていれば可とすべきでしょう。フロア長など中間管理職からの報告の場合、それは本人が直接見聞した話なのか、アルバイトやパートからの聞き取り情報なのかによっても確度は変わってきます。気になったらフロア長同席のうえで直接アルバイトやパートに話を聞きにゆく、くらいのフットワークの軽さは、経営者たるもの常に持ち合わせていたいものです。

 多くの場合、経営者は社員から聞いた情報を集め、組み合わせて判断に供するというルーティンを踏んで仕事をしているわけですが、その中にあって情報の質を保つための工夫として、常にこの3点を意識しておくのがお勧めです。

① 粒度は聞く側の工夫によって管理できる
② 鮮度は情報を用意してくれた社員に対する感謝を忘れずに
③ 確度は必ず裏付け取りを。必要なら情報源に直接あたる。

 「多くの人間は、自分が見たいようにしか物事を見ようとしない」古代ローマの英雄、ユリウス・カエサルの言葉だそうですが、経営者たるもの、聞きたい情報もそうでない情報も、一定の品質を保って情報収集に努めたいものです。

 あなたの会社では、情報の品質管理について、きちんと工夫ができていますか?

2018.08.28

入るなら、人を大切にする会社

まだ暑い日が続く8月下旬、世の中では大学三年生を対象としたインターンシップや企業説明会が花盛りです。人手不足と「働き方改革」が言われる中で、今年は空前の売り手市場だそうですが、そうなると企業側は「人を大切にする会社」であることを前面に出して、少しでも学生に気に入ってもらえるような努力をします。

 具体的には、有給休暇の取りやすさや充実した福利厚生、残業の少なさ、転勤について本人の希望を重視する、副業OK、その他さまざまな特徴を訴えるわけですが、どの企業も同じような点を説明するので、学生側もだんだん耳が肥えてきます。では、学生側はどんな企業を探しているのでしょうか?

 最初のうちは大人しく企業側の言うことを聞いていた学生も、説明会出席の回数を重ねるごとに、この企業はなぜ人を大切にしようとするのか?他の会社と考え方の違いは何なのか?そんな視点を持ちながら、説明会を廻るようになってきます。

 企業側のホンネを突けば、とにかく人が足りない、人手を集めなくてはならない、優秀な学生を他社に取られてしまわないよう囲い込みたい、あるいは他社になびいている学生を何とか自社に振り向かせたいその他、一言で言えば「人を取りたい」ということに収斂するわけですが、学生側は全員が必ずしも「人並みに就職したい」と考えているわけではないところに微妙な不一致点が出て来ます。

 非常勤で講義をしている大学で学生に接していると、今も昔と変わらず卒業後の就職が学生にとって人生の一大イベントであることを感じます。ただ8月くらいの段階では、自分の考えを明快に語れる学生とそうでない学生の間にまだ相当のバラつきが見られます。実際には仕事へのやりがいを求める学生、転職や起業を通じたステップアップを志向する学生、ネットワークの充実を図りたい学生、広く人生経験の機会を求める学生その他、さまざまな希望があるのですが。総じて言えるのは学生側の考え方は労働条件よりも働くことの意義ややりがいなどに重点を置いたものになるケースが多く、労働条件は確かに大切だが、決定的な要因にはなりにくいようです。

 インターンシップを通じて、企業側が面接では見えない学生の人柄や考え方を見極めたいと考えているのと同じように、学生側もまたインターンシップを通じて世の中にはどのような企業があるのか、そもそも人生についての自分の希望は一体どんなものなのか、そしてそれを叶えるためにこの企業は向いているのか、というようなことを確かめようとしています。

 学生側が好印象を抱く企業の典型は、インターンシップを通じてそのような懐の広い対応ができる会社であり、さらに言うと仕事のやりがいについて学生が「なるほど」と感じるようなアドバイスのできる担当者がいる会社です。

 入るなら、人を大切にする会社が良いと考える点は、多くの学生が共有するものだと思います。会社としてなぜそうするのかを分かりやすく説明できないと、通り一遍の説明となり、学生に納得感を持ってもらうには至りません。あなたの会社は、インターンシップに来る学生に対してしっかりとそれを訴求できていますか?

2018.08.21

ベンチャービジネスがベンチャービジネスでなくなる時

インターネットの辞書によると、ベンチャービジネスとは「独創的な技術やサービス、経営システムを開発・導入し、未知の要因が多い新しい事業に果敢に取り組み、急成長している企業。リスクを恐れず、新領域に挑戦する若い企業が主であり、経営を拡大していこうとする成長意欲が高い。日本では特にネット・ベンチャービジネスが大きな注目を集めている。(後段略、知恵蔵、https://kotobank.jp/word/ベンチャービジネス-8697)」というものだそうです。

引用させていただいた部分は言葉の定義として普遍性のある説明になっていると思います。つまり①独創的に、②未知の事業で、③急成長している会社、ということだと思います。その意味で確かにインターネットを使った事例が多いという点は頷けますが、必ずしもそればかりだとは言えず、ネットを使わずにそれまで世の中になかったサービスを売り出した会社も十分ベンチャービジネスの範疇に入ると思います。始まったころのコミケや「終活ビジネス」なども、独創的な未知のビジネスと言う意味ではベンチャービジネスの端くれだったのではないでしょうか(急成長したかどうかは会社によると思いますが)。

さて、スタートアップから急成長期を経てそのまま成長が続くと、どんな企業でもそのスピードに鈍化の傾向が出て来ます。これは考えてみれば当たり前で、はじめは10人の会社が5人増やせば人数で見た成長率は50%ですが、100人になってしまえば同じ5人の増加はわずか5%にしかすぎないわけです。

そうなると、最初のうちは独創的なやり方で未知の事業を手掛けていたとしても、時間が経ったことで気が付いてみれば、いつの間にか大企業の仲間入りを果たそうとしている段階に到達していたりするのかもしれません。その頃には事業そのものについての経験値も増え、もはや未知の事業とは言えなくなっているかもしれませんし、類似のビジネスモデルによる競合他社が参入していれば独創的ともいえなくなります。

最近は頭文字を取ってFAGAともいわれるFacebook, Amazon, Google そしてAppleも皆、似たような道をたどって業界の覇者にまで上り詰めました。ライドシェアの「ウーバー」は、最初市場にデビューしたころは鮮烈なベンチャービジネスでしたが、今や市場によっては後発との競争に敗れ、必ずしも一強時代を築くまでには至らなかった事例だと思います。

ベンチャービジネスからはじめて、世界を制するまでに上り詰めるのか、それともどこか途上で留まるのか、その違いは何だろうかと考えると、「次のステージに上がるビジョンをどのように構築し、どのように共有できているか」ではないかとの発想が心をよぎります。

今でこそAppleはFAGAの一角を占め、更には一企業としての株式時価総額で世界最大の企業となりましたが、かつて創業者のスティーブ・ジョブスを追放した時は、パソコンの開発競争でマイクロソフトに敗れ、次のビジョンを社内で共有できない状態に陥っていました。その後、紆余曲折を経てジョブスが経営に復帰し、iPhoneに代表される新しい価値を市場に提供することを通じて再び成長軌道に乗ることができたわけです。

次のステージに上がるビジョンをいかに構築し、さらにはどのように社内で共有するのかと言う課題は、本来企業経営者にとっては普遍的なものだと思いますが、ベンチャービジネスのように力強い成長を続けてゆくことを志向するならば、間違いなく必須の経営課題だと言えるでしょう。

ビジョンの構築と社内での共有のために誰が何を担うのか、はっきりと決まっている企業は強いです。経営者としてあなたは、ビジョンの構築と社内での共有をしっかりと進めていますか?