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2018.09.25

社会正義と経営と従業員

 インターネットの普及が進み、すでに社会インフラとして欠かせないものになったことで、大きく変化したのが情報の伝わりやすさ・漏れやすさだという認識は疑いようのないところだと思います。大企業のスキャンダルはあっという間に拡散され、芸能人の何気ないコメントがSNSで炎上する、といった類のエピソードはインターネット時代ならではの出来事でしょう。企業経営者にとっても看過できない社会の変化です。

 他方で、社会学的にこれらの現象を説明する概念は、メディアなどでまだ市民権を得ていない段階だと思います。なので、ここでは仮に物理学で物質が持つ熱の伝わりやすさを示す熱伝導率になぞらえて「社会の情報伝導率」という呼び方を使って説明します。

 インターネットはおろか、携帯電話もFAXもなかった時代、社会の情報伝導率は今とは比べ物にならないくらいに低いものでした。企業経営者や為政者は、自分たちにとって不都合な情報も、秘匿や囲い込みができるはずという判断に傾く事例も少なくありませんでした。実際は、後になって隠していたはずの情報が明らかにされ、社会正義に反する行為であると糾弾されることになるケースも多かったのではないかと思うのですが、公害を発生させた企業が地元行政と結託して頬被りを決め込もうとした水俣病の事例は、その中でも典型的なものです。

 それに比べると現在は、インフラとしてのインターネットが整備されたことに加え、SNSなどさまざまなサービスが上部構造として発達し、ユーザーのリテラシーも向上してきているなど、社会の情報伝導率が今も止むことなく高まり続けています。ちょっと前なら、飛行機で移動している時間にはインターネットでの連絡がつかなかったはずなのに、このところ大手航空会社が競って機内Wifiサービスの充実を図っており、まもなくするとインターネットが使えないのは離着陸時のごく短い時間のみ、という時代がやってくることはまず間違いなさそうです。

 そうなると、企業経営者の立場でも社会正義へのコンプライアンス対応が今まで以上に重要な課題になってくると考えられます。今や、世界のどこにいても発生した事件について即応することが求められる時代になったということです。災害時の事業継続手順を定めたBCPの実践や、会社が関係したスキャンダル、あるいはテロや国際犯罪による被害など、あらゆることに即時性を持って対応しないと、それがどういう理由であれ「遅い」というだけで批判される時代になりつつあるということです。

 経営者にとっては潜在的な負担が増すばかりの、正直に言えばありがたくない社会の進化かもしれませんが、こういった情勢にいち早く対応することは、従業員から見れば会社を信頼するための前提条件になります。即時性を持った情報開示・情報共有に積極的「でない」会社は、勤務先としてちょっとどうなのよ、と考える人がどんどん多くなる、ということですね。そしてそれは、日常の小さな問題にも当てはめられて考えられるようになります。

 従業員にとっては以前であれば、居酒屋で同僚や親しい友人を相手に酒を飲みながら、上司の悪口と一緒に吐き捨てられていたような、職場を巡る小さなトラブルや、程度は軽くとも雇用や待遇に関わる不明朗な対応なども、会社側には是正の用意があるにもかかわらず、即応できないというだけで内部告発や書き込みの対象になるかもしれません。経営者としては、そういう事態がいつ起きてもおかしくないと、心のどこかに留めておくことが求められる時代になったということなのです。

 「社会の情報伝導率」は今後も高まり続けるものと思われます。そうした中で従業員の信頼を得続けるためには、小さな問題でも隠さず遅滞なく開示し解決するなど、一歩先んじて「良いことをする会社」であることを証明し続ける努力以外に解決策はないのです。

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