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コラム

2019.01.08

絵に描いた餅を現実のものにするには

あけましておめでとうございます。年末のお休みからようやく復帰いたしました。今年もFuture SWOTをどうぞよろしくお願いいたします。

大学の授業や企業の研修で課題解決型のワークショップを実施すると、解決策について参加者からはさまざまなアイディアが出て来ます。多くの場合、グループワークを通じた精製工程を経て、数々のアイディアは整理統合され(あるいは淘汰され)、課題に対する対策として発表されます。ここまではよくある話でありまして、いわば「絵に描いた餅」の段階だと言えます。良い案であれば企業では特に、それを現実化することが求められるのですが、ではどうすれば「絵に描いた餅」をうまく現実化できるのでしょうか?

むろん、責任者による意思決定を経て「これを現実化せよ」という業務課題になってくれることが前提の話ですが、業務課題になった途端、担当者はさまざまな制約条件との格闘を強いられることになるはずです。なぜそうなのか?についてプロジェクト工学の前田考歩さんは、以下のような視点を提供してくれています。

① やったことのない仕事の勝利条件は事前に決められない
② プロジェクトにおいては、こうあれかしと考えて立案した施策が想定を超えた結果をもたらす
③ プロジェクトの課程における諸施策の結果もたらされる状況は、即座に次の局面における制約条件となり、時にプロジェクトの勝利条件そのものの変更すらも要求する

ちょっと難しいコトバが続きましたが、勝利条件というのは「要はこうなりゃ成功」という、高跳びのバーみたいなものを想像いただければと思います。で、施策とは何か資源と時間を使って能動的に行う作業のことで、とりあえずゴールを決めていろいろやっていると、予期せぬ展開が起きて、その結果「要はこうなりゃ成功」と思っていた条件すら満たせなくなることがある、と言う話です。

ではどうすれば良いのか、ということですが、詳しくは前田さんの「予定通り進まないプロジェクトの進め方」(宣伝会議 刊)と言う本をお読みいただくとして、Future SWOT的に言うと「絵に描いた餅」のあり方をしっかり議論して、最低限どこまで実現しなくてはいけないのかを確認しておく、と言うことに加え、実施段階での内的コミュニケーションを徹底させることによって、担当者がいち早く危険因子を見つけて除去できる体制を取る、ということになりますね。そもそもFuture SWOTには内的コミュニケーションを促進してくれる効能がありますので、まずこの部分をしっかりと作り込んでおいてから現実化のプロセスへと入って行ける分だけ、トラブルへの耐性を高めた対応が可能となるのです。

2018.12.18

議論の中身を一目瞭然に表現するために

 仕事をしていると時々、ややこしい話をそれでもまとめて他人に説明しなくてはならない羽目に陥ることがあったりしませんか?個人が考えたことを表現するためのツールとしては、マインドマップやマンダラチャートなど、ビジュアルに訴える手法が人気です。さらに最近ではパワーポイント(マックならキーノート)の作図機能のおかげで、時間さえかければ込み入った話を一目瞭然に表現することができるようになってきました。ところが同じことをグループワークでやるにはどうすれば良いか?と言う部分では意外と進歩していなかったりします。

 古典的には表やグラフを使ったり、箇条書きにしたり、模造紙に小学生の壁新聞よろしくレイアウトしてみたりと、さまざまな工夫がありますね。ポストイットを模造紙に貼ってあれこれ組み合わせを変えてみる、といった手法はよく使われていると思うのですが、「グループ」ワークと「パーソナル」コンピューターが今一つ相性が良くないことも手伝って、この世界はなかなかアナログなまま取り残されている感じです。もう少し時代がニーズに追いついて来れば、巨大なタッチスクリーンが一般化するのかもしれませんが、今のところ模造紙・ホワイトボードとマーカーが絶滅しそうな気配はありません。

 でもデジタル化されていないからと言って、グループワークを一目瞭然に表現することの重要性が否定されているわけではありませんで、いわゆるブレーンストーミングのプロセスを後から共有するなど、できたら良いのにというニーズは確実に存在しています。人的に余裕のある職場であれば、パソコンを抱えた書記を一人立てる、という方法もあると思いますが、常にそうできる職場は必ずしも多くはないでしょう。

 ネットワークを使って、議論しながら皆が自身のパーソナルデバイスに向かって同じ素材を加工しあう、というソリューションもないわけではありませんが、やはり一つのホワイトボードに向かって議論するのとでは刺激の度合いが違ってきます。

 議論を煮詰めながら、同時に一目瞭然の形に表現するための手法として、その昔KJ法やNM法という「発想法」が人気を博した時代がありました。NM法は連想による発想を軸としますが、ビジネスで使うKJ法は議論で出された「似たもの情報」の大意要約を繰り返し、情報相互の位置関係をビジュアルに表すことによって「要は何が話されたのか」を表現しようとする手法です。

 全体観を押さえながらも「要は何が話されたのか」を煮詰めて共有できるという部分において、デジタルなソリューションとは一味も二味も違う長所を持っているKJ法ですが、人知に負う部分が大きいことに加えて模造紙やラベル、ゼムクリップなどのツールがとってもクラシックなこともあってか、半ば古典芸能化した感があります。いわば算盤と同じような運命をたどっている、ということでしょうか。

 手法としてのKJ法は使われなくなったかもしれませんが、大意要約を繰り返すことで要旨を明らかにしてゆくというアプローチそのものは決して陳腐化したわけではありません。むしろデジタルの世界でこそ、分かりやすく資料をまとめる上でのコツとして、その重要性は増しているのではないかと思います。大意要約に長けたモデレータがまとめるグループワークは、その品質においてそうでないグループのものとは全く違った輝きを見せてくれます。

 あなたの会社では、社員の大意要約の能力を重視していらっしゃいますか?

2018.12.11

弱みは消えるよ、簡単に

先週に引き続き、SWOT分析がらみのお話をひとつ。この手法を用いる場合に、企業の経営環境を踏まえた戦略案を構築するため、強み(S)、弱み(W)、機会(O)、脅威(T)の4つの要素を導き出すという手順は変わらないのですが、その要素は経営の立ち位置によって大きく変化する場合があることをご認識いただきたいのです。なぜそうなるのか?について少し詳しくお話します。

私は以前、海外で仕事をしていたことがありまして、ドイツ人の上司、そのまた上司がフィンランド人、同僚もペルー人、スペイン人と、豊かなダイバーシティに恵まれた職場環境だったのですが、いずれも英語以外の主要言語を一つ以上話せる人たちでした。そうすると「英語しかできない」ことは、潜在的な「弱み」になります。その後日本に戻って仕事をする中で、「英語ができる」ことは明らかな「強み」になりました。ことほど左様に、勝負するマーケットが変わればそれまで強みだったものが弱みになり、その逆もまた起こりうるということですね。

それと同じく、「機会」や「脅威」についても、ある日突然消えてなくなったりすることがあります。具体的には規制がかけられたり、かけられる予定だった規制が行政側の都合で変更になったり、例外規定が出来たりするパターンがあります。太陽光発電の固定価格買い取り制度の見直しなどは、典型的な機会の消滅だったのではないでしょうか。

外的要因による変化以外にも、経営の目指すところが変化すると、それにつれて強みや弱みが出たり消えたりする場合があります。それまでジュニア育成で結果を出してきた都会のテニススクールが、少子高齢化に対応するためシニア向けのプログラムを充実させるという経営方針の転換を行う場合、ふつうシニアはハードなテニスをするわけではないため、テニスがとても強くてジュニア選手があこがれるようなハードヒッターがコーチとしての強みを失うケースがあったりします。逆に、テニスの腕はそこそこでも、人当たりが柔らかく面倒見の良いコーチがシニアに評価され、それがスクールの強みとして脚光を浴びる、というような展開にもなり得るのです。

もうお分かりかと思いますが、SWOT分析は経営を取り巻くさまざまな事情の変化によってとても移ろいやすいものである、ということです。この手法をよりよく活用するためには、その特性を良く理解して、定期的な中身の洗い替えをすることが最も有効なのです。少なくとも2年に一度くらいはゼロベースから見直す形で分析をやり直すことによって、変化に適応した戦略を維持できるようになります。SWOT分析は一度やったらそれでおしまい、というわけではないことを、この機会にしっかりとご認識ください。

あなたの会社では、経営環境の変化に対応してタイムリーに戦略を見直していますか?