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コラム

2018.07.17

日本社会が持つ絶対的な強みとは

海外で仕事をしていて日本に帰って来ると、社会の仕組みに独特の落ち着きと言うか、居心地の良さを感じて、なんだかほっとさせられることがあります。それが何によるものなのかを体系的に解き明かした研究は必ずしも多くないと思うのですが、元証券アナリストで日本に関する著作も多いデービッド・アトキンソン氏は、それは日本人が「場を慮る」力に長けているからではないか、という所見をお持ちです。日本社会の特徴として「場=空気=居心地」を大事だとする考え方が支配的であるという点は、確かにご指摘のとおりだと思うのですが、でもそれが日本社会の持つ「強み」の本質なのかというと、どうもそれは違うように思えます。

松下やソニー、トヨタやホンダなど、企業社会におけるかつての成功事例に共通して見られるのは、社内で交わされた徹底的な議論ではなかったかと言うことを想起すれば、おのずとその違いは明らかでしょう。「ワイガヤ」、あるいは「やってみなはれ」で象徴的に語られている新規事業への積極的・徹底的な取り組み姿勢が往時を物語ります。誰でもやる気のあるものが参加でき、さまざまな意見が反映される形で事業が進められて行きました。他方でアトキンソン氏の指摘するような、空気を大事にする文化も尊重されたため、それがどんなに激しいものであっても、事業を巡る社内の議論がその後の対立を助長するようなこともなかった、と言う意味においては強みを構成する一要素ではあったのだろうと思います。それでも「空気を読む」あるいは「面倒くさいことを避ける」という行動様式は、成長に向かう強烈なエネルギーを少しでも効率的に活用するための、言ってみれば従の知恵であって、決してそれが主となるものではなかったはずです。

その後、時代は流れて超高齢化社会を迎え、成長へと向かう強烈なエネルギーを失った日本社会における文化的特性が「空気を読む」あるいは「面倒くさいことを避ける」という形でしか残っていないのだとすればそれはとても残念なことだと思います。他方で、効率性を貴ぶ行動様式が保存されている社会だとすれば、そこに「ワイガヤ」を復活させることができれば、スムースに新たな強みを生み出すことも十分可能なのではないでしょうか。

あなたの会社では、胸襟を開いたオープンな議論がなされていますか?そしてあなたは経営者として、そのような議論の重要性を社内に伝えていますか?

2018.07.10

働き方改革と、労働対価と成果の話

今国会で成立した「働き方改革関連法」は、2019年4月から順次施行されることになりました。世の中には様々な議論があると思いますが、経営者の立場から言えば、成果に対する労働対価の選択肢が増えることは歓迎すべき変化です。他方で残業規制などが厳しくなる部分もあり、労働時間の面では今までより自由度が低下する部分も出てくると思われます。

でも、ちょっと待ってください。労働対価をしっかり検討すれば、得るべき成果は必ず得られると、本当に言えるのでしょうか?社長の立場で考えると、兼業禁止規定のある社員に対して会社が支払う給与(+賞与)は、その社員にとって全ての金銭収入です。つまり会社がその社員の生活すべてを面倒見ている、と言える状況なのですが、そうだとしたら会社はその社員が会社に対して、追加的な労働なしに、合理的な勤務時間の中で提供しうる最善の成果を要求できる立場にいるはずではないでしょうか。

現実的には、一方で昇進・昇格など様々なインセンティブを用意しつつ、人事考課で成果の度合いを評価した結果に基づき給与や賞与が決定されている場合が多いと思います。つまり制度的に「成果は最善であってほしいが、そうでない場合は評価によって労働対価に反映するよ」という「仕組み」を採用しているわけです。そうすると、社員の側からも「給料分だけ働けば良いや」という反応が返ってくることになります。

サービス残業などが難しくなる流れの中で、決められた労働時間や業務指示書に基づいて最善の成果を求めるためには、管理面の仕組みだけでなく、成果そのものを自動的に産出するような仕組みが必要なのです。具体的には経営理念や経営目標が経営戦略まで一貫性ある形で社員と共有されていること、目標管理の仕組みが出来ていて、それに従った成果が定期的に報告されるようになっていること、スタッフ部門が仕組み全体の動きに継続的な目配りをしており、不具合は順次修正されるようになっていることなどが挙げられます。大企業では皆当たり前の話です。

ところが多くの中小企業ではこの仕組みが機能していないため、どうしても管理面中心の、いわば形だけの働き方改革に終わりかねないという例が多くなりがちです。せっかく世の中が働き方改革に注目しているわけですから、この機を逃さず最善の成果を求めるための仕組みを導入されては如何でしょうか?

世の中の流れについて行くことは当然として、世の中の流れを自らの変革に活用することこそ、有能な経営者が持つべき視点なのです。あなたは働き方改革を自らのビジネスに生かす形で活用できていますか?

2018.06.30

経営環境をくまなく見るためには

会社を取り巻く経営環境は、時々刻々と変化するものです。常に目配りしているつもりでも、社長一人が見ていられる範囲はおのずと限られるものです。どんな人間にとっても一日は24時間しかありませんし、会える人の数にも限界があります。

ではどうするか?会社であれば当然のこと、社員にやってもらうことを第一に考えます。仕事を手分けすることで、社長とは違う時間の過ごし方をさせることになります。でもそうなると、必然的に社長とは違う景色を目撃することになるわけで、経営(事業)環境の変化についても社長とは異なる情報に接することになります。社員の間でも、職種や職位が変わればまた、目に見える景色はそれぞれ変わってくるのです。製造現場の社員と営業最前線の社員の目に映る景色としての経営(事業)環境は、全くと言ってよいほど違うものですし、同じことが経理や人事と研究開発についても言えるのです。悪くするとそれがセクショナリズムの源泉になることもあるこのような違いを、むしろ積極的に認めたうえで、違って見える景色について語り合うことができたなら、それだけでずいぶんと経営(事業)環境への認識が変わってきます。それまでは漠として見えなかった未来も、なんとなくですが視覚的に認識できるようになり、見えた景色についてあれこれ考えを深められるようになります。

目には見えない変化ですが、企業にとっては大変意味のある変化です。これを上手く進めるコツは、視点を現在から少し未来にずらしてみることです。現在について語り合うと、どうしても構造的な問題点や責任のあり方など、仕事上の課題についての意見が出やすくなり、立場の違いが発言に影響する度合いも大きくなりがちです。それが5年後、あるいは10年後を意識した議論だと、視線を高くして長期的な観点から発言せざるを得なくなり、大局観を共有できる機会が増える分だけ小さな対立は表に出てきにくくなるのです。

他方で、「未来のことなんて、考えたこともない」という社員が少なくないのも事実だと思います。普段考えたこともない話題を振られたとき、一般的にみられるのは「黙ってしまう」という反応です。こういう場合に大切なのは、じっくり時間をかけてでも発言を引き出そうとするリーダーの忍耐です。

あなたは忍耐深く社員に接していますか?そして社員の情報を活用できる形で引き出していますか?