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コラム

2019.06.08

経営理念が果たす絶対的に重要な役割とは(戦隊ヒーローにおけるイケメンの罪)

 人は、時として判断に迷うものです。迷ったときに正しい判断を下すため、判断基準として頼れるものがあるかどうかはどうかすると人の生き死にを決める要因になることもあるくらい重要なものなのです。どうして人は迷うのでしょうか?

 ・・・と、今日はのっけから硬ーい話になってしまいましたが、Future SWOTでチャンピオン戦略を考えていると、甲乙つけがたい排他的な二つの案のうち、どちらかを選ばなくてはならなくなることがたまにあります。そういう時に頼れる判断基準となってくれるのが経営理念です。わかりやすいように、今日は戦隊ヒーローの例でお話ししたいと思います。

 たとえば、若干視聴率の振るわない子供向け戦隊ヒーロー番組があったとしましょう。主役のイケメン俳優4人のうち2人が子供のお母さんたちに人気で、サブキャラは昨年の新人賞を取った美少女アイドル、主にお母さんたちによるSNSの書き込みも多いとします。でも視聴率にはつながらない。毎度似たような展開が子供に飽きられたのかもしれません。

このような場合に、SWOT分析の常道として「強みを機会に投入する」という考え方があるので、「イケメン」という強みを「お母さんたちの人気」という機会に投入することを考えてみましょう。いままでよりもイケメンを出すわけですから、主役の素顔を(しかもアップで)写す時間が増えます。使える時間が決まっている番組の展開上、戦闘シーンが削減されて、どうかすると恋愛系の場面が増えたりすることになりかねません。

そうすると、子供たちはますます番組から離れるようになるかもしれません。ヒーロー番組路線で行くのか、あるいはイケメンをお母さんたちの期待に添わせるのか。そもそも番組制作の理念は何なのか?ということがここで問われるわけです。

このような番組でも、ふだんは誰も見ない企画書には、番組制作の目的として「勧善懲悪的なストーリーにおいて正義の役割を明示的に展開することで、明日を担う青少年の健全な育成に資する番組を目指す」、みたいなゴタクが並べてあるのではないかと思うのですが、実はそれこそが参照されるべき拠り所なのです。

SWOT分析は、通常いつも目に見える現象の仕分けから始まるのですが、その意味では確かに「イケメン・美少女」はTV番組としての「強み」でしょうし、子供向けヒーロー番組における母親の視聴率、というのも「機会」と分析されるケースが多いと思います。そうすると、「強みを機会に投入する」という戦略構築の考え方そのものは必ずしも間違っているとは言えないわけです。ではなぜ「イケメンを母親に見せる」がよろしくないのか?

もうお分かりだと思うのですが、目指すべき番組制作の目的、すなわち企業にとっての経営理念は、明日の青少年のために勧善懲悪的なストーリーを目指しているわけで、お母さんたちのことや恋愛モノやイケメン強調は一切謳われていないわけです。「戦略は、経営理念を実現するためにこそある」ことが、ここでイケメン路線を否定する最大の理由になるわけです。

むろん、背に腹は代えられませんから、少しでも視聴率を稼ぐためにちょっとしたバリエーションとしてイケメンのアップが増えたりすることはあるかもしれません。でも、たとえそうだとしても完全に路線転換することがありえないのは、この事例では番組の制作目的が極めて明快だからです。

むしろ、もっと「明日の青少年=子供」に寄り添うことで、本来の訴求力を回復して視聴率アップにつなげるなどの対策が、チャンピオン戦略としては望ましいわけです。たとえばいじめの問題や、少子化あるいは地球環境の問題なども題材になると思います。企業の経営理念も判断の拠り所として、迷ったときは常に振り返られるものであってほしいですね。

2019.06.01

占いとFuture SWOT

未来の姿を見通すなんて、占い師じゃああるまいし。面と向かってそういわれた訳ではありませんが、Future SWOTのコンセプトを説明すると、時としてそれだけで胡散臭そうな顔をされることがあります。10年後に何があるかなんて、占い師でも恐山のイタコでもそう簡単には見通せるはずがない、世の中そう考える方のほうが多数だと、私もそう思います。仮にその部分がそのとおりだとして、では未来のことを議論するという取り組みには全く意味がないのでしょうか?

 長いこと一つの組織に勤めていると判ると思うのですが、10年前と今の仕事の仕方は、実はよく似ていたりします。なぜそうなのか?それは会計原則や就業規則の面で継続性を求める「仕組み」があるからで、たとえば勘定科目の定義なども10年前と現在で変わっている要素はほとんどない、という例が一般的だと思います。

とはいえ、例えば市場環境そのものは時々刻々と変化しますから、圧倒的に多くの会社が「十年一日のように同じ仕事を続けていたのでは企業として生き残れない」、という課題に直面しているわけです。そこには明らかなギャップがあります。

Future SWOTは、このギャップに注目したことによって生まれた技法である、ということができると思います。それはつまり、①「成功」「ヒーロー」「苦戦」「不振」「ライバル」などのキーワードにより、日常業務の延長線に思いを馳せて10年後を想像するアプローチを取っていること、②SWOT分析によって外部環境の変化を意識した検討ができること、③社内に埋もれたアイディアの中にはこのギャップを解消するための斬新な視点がしばしば含まれていること、などの属性によるものなのです。

社員であっても経営者でも、仕事をして家に帰って休む時間は平等に一日24時間です。そんな中で特に長いこと意識されている課題については、経営者がそうであると同じように社員の側も頭を使ってあれこれ考えているわけで、そのような課題であればあるほど、一度「アイディア・マイニング」にかけて何が出てくるか、試してみる価値はあるのです。

2019.05.17

国語力は組織力?

 Future SWOTカードゲームは、「自社の10年後」についてのビジョンを共有するためのツールです。カードには同じ質問が書いてあるため、「誰がやっても結果にバラツキが生じない」ことをセールスポイントにしています。ところが実際にやってみると、ゲームの成果として得られるビジョンについて、切れ味の鋭いものから何を言っているのかよくわからないものまで、だいぶ違いが出てきてしまいます。これはどうしたことなのでしょうか?

 最大の理由は、参加者の資質による違いです。本気で将来を担う期待の若手と、将来のことなどあまり考えていない問題意識の薄い人とでは、同じ問いかけに対する反応の違いも月とスッポンです。なので、参加者の選定には細心の注意を払いましょう(逆に、参加者の資質を問わず実施することで、広く問題意識を呼び起こすという使い方もあるので、その場合は成果に目をつぶる必要性が出て来ます)。

 今一つの理由は、「本当に会社の未来が難しい」という場合です。たとえば人口減少が続く地域の公共交通機関など、いわゆる限界産業・衰退産業についてのセッションでは、さすがのFuture SWOTも明るい未来を描けないという場合が出て来ます。もっともFuture SWOTを実施しようとするからには、どこかに自社の可能性を感じている≒限界産業ではない場合がほとんどだと思われますので、この要素が該当する場合は多くないと思います。

 もう一つ、主催者側に起因するものとしては「ファシリテータの国語力が弱い」という理由があります。つまり、参加者の口からある程度の情報は出てきているのに、発言内容を上手く整理できなかったり、重要な発言のカケラを上手く拾えなかったり、ということが発生しうるのですが、そうなると折角参加者から発信された情報が成果につながらないことになってしまいます。

 セミナー等で私はいつも、Future SWOTの成否はファシリテータの国語力にかかっている、と申し上げています。人の発言をよく聞く力、大意要約をする力、重要な情報を抜き出す力、組み合わせてわかりやすく表現する力などがそれにあたります。どれも小中学校で国語の力として評価された項目です。学歴や職位は全く関係ありませんが、この「国語力」だけは本当に重要な力です。Future SWOTをやってみようとされている方々には、ぜひこの点を心してファシリテータの人選を行って頂きたいと思います。