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コラム

2019.07.25

SWOT分析は何のために

 コンサルティングのツールであるFuture SWOTはそのネーミングや商品構成から、どうしてもカードゲームが目立ちますが、キモとなる部分はSWOT分析のプロセスにあります。カードの成果をSWOT分析につなげられるように、上手く発言内容をまとめるところがファシリテータの腕の見せ所となります。そのうえで、10年後の会社について参加者が考える「強み」「弱み」「機会」「脅威」を上手く絞り込むことが求められるのです。

 ここで注意したいのが、アイディア・マイニングによって広く浅く集められた社内の死蔵情報は、SWOT分析で捨象されるには勿体ないと感じられるくらいの広がりを持ったものになる場合があることです。こんな場合にはどうすれば良いのでしょうか?

 そもそもFuture SWOTは、社員の持つ情報を戦略に生かすためのツールですので、戦略作りに使われなかった情報は当然に棄却される運命を辿ります。そして戦略作りは当然ですが事業の発展と企業の存続・成長のためになされるものなので、棄却される情報に対する救済措置は初めから予定外です。ポストイットやパワーポイントに書き留められるだけにとどまった数多くの情報がこの時点で廃棄され、忘却されてゆきます。ワークショップを手掛けていて、いつも思うのは「ちょっと勿体ない」措置だということです。しかしながら。

 たとえ対象が会社の10年後という、あくまで観念的に想定されたものであったとしても、その時点での成長と繁栄のための戦略は、予算と工程を裏付けとした実戦的なものであるべきだというのがFuture SWOTの設計思想です。なので、たとえそれが優秀な精子でも、卵子への到達が2番目であったなら、その遺伝子が棄却されざるを得ないのと同じように、チャンピオン戦略として残れなかったアイディアは、数多くの情報と同じように棄却されてゆきます。

 これが会社の現状を把握するためのSWOT分析、いわゆるToday’s SWOTだといささか趣が異なります。現状その会社が持つ強みとそれを生かしうる機会については、それらを網羅的に把握しておく必然性があるからです。

 残念ながら、10年後の会社について分析するための根拠となる経営環境については、「こうなったら良いのにな」といった希望的観測が織り込まれたり、「よくわからないが、おそらくこうなっているのではないか」などの不確かな予測も混じっているため、それを前提とした考えについて網羅的な把握をすることはあまり意味を持ちません。故にFuture SWOTでは、勿体ないと思いつつも2番目以下の戦略案を棄却する、というやり方を採用しているのです。

ただし、経営者の関心が向く範囲において、2番目あるいは3番目の戦略案を記録しておいていただけることは決して悪いことではありません。コンサルティングで話題として取り上げることがあるかと言われれば、それはないかもしれませんが、変化の激しい世の中において、第二案以下の戦略が意味を持つ日が来ないとは誰も言えないでしょうから。

2019.07.18

いつも会社の事だけを考えていると

 コンサルタントをしていると、創業者社長と二代目以降の社長とでは、経営に対するものの考え方が随分と異なるという場面にしばしば出くわします。自ら創業して大きくなった社長には、「人の話を聞いてみる」というタイプの人はあまり多くありません。反対に、二代目以降の社長には「周りの知恵を使おうとする」タイプが割と普通にいます。その違いはどこにあるのでしょう?

 創業者社長の場合は、これまでをご自身の努力と裁量で乗り切って来られたという経験がそうさせているのだと思うのですが、自ら考え、自ら率先して動こうとする傾向が強く見られます。従業員をはじめとする関係者は、社長の考えについて行くことが仕事で、全体として上手く回っている、という絵姿です。

 仮説ですが、創業者社長と二代目以降の決定的な差は、「世の中に会社のことを自分より知っている人が存在する人(二代目以降)とそうでない人(創業者)」の違いではないかと思います。創業者でも、会社をはじめて間もないころに出会ったパートナーなど、同じように長い時間を会社のために使ってきた仲間がいる場合は少なくありません。

でも、むしろそうだからこそ会社についてどう責任を取ったら良いかということについて、第一者として考える自分とそうでないパートナーとの意識の差を、創業者社長は身に染みて分かっているのだと思います。長い時間積み重ねられた意識の違いは、今更埋めようがない、ということですね。

「まず人の話を聞く」という態度は一見すると丁寧で謙譲の美徳を表すような響きがありますが、そのような状況下で常に経営責任を取ることだけを考えている創業者社長からすると、いささか無責任な態度にも見えてしまうのです。

他方で二代目以降の社長にとって、先代の知恵やベテラン社員の経験値は、望んでも自らの手に入るものではありません。自分が責任を取るべき会社について、自分が至らない部分があることを分かっていればこそ、人の話を聞いてみようという意識が先に立つのです。

Future SWOTは、社員の知恵を掘り起こしてその中から10年後のメシのタネを見つける、というアプローチです。セミナーなどでこの考え方を説明していると、反応してくれるのは比較的若い二代目以降の社長さんが多いようです。その背景にも、創業者と二代目以降の意識の差があるのではないかと、今のところそのような仮説を立てて対応している状況です。

2019.07.11

お客様の声に耳を傾ける

マーケティングを勉強していると、よく「お客様の声」がどれだけ重要かという教えに出会います。経営の神様と言われた一倉定氏は「社長がいるべき場所は社長室ではない、それはお客様のところである」と言っています。

 お客様の声を聞こうとするなら、それはお客様のところに出向くのが正しい方法であることに疑問の余地はありません。業種業態によって異なりますが、通常お客様は一人・一社・一か所だけということはなく、毎日訪問し続けても間に合わないくらい数が多かったりする場合もごく普通にあるわけです。それを補うのが会社組織であり、営業部や営業マンたちであるわけです。

 そうだとするならば、お客様の声に耳を傾けるためのチャネルとして、営業部をはじめとする会社組織内部の人間に焦点を当てることがどれだけ重要かということも自明であろうと思われます。

 ところが、少なくない事例において経営者は自らの営業力や顧客対応能力に大きな自信を持っていて、たとえお客様の声を聞くためであろうと、社員が持つ情報を活用するということに頭が向かない、というパターンを目にします。中小企業でも個人事業から発達した、いわゆるカリスマ経営者に良く見られます。「営業マンの報告だけで市場がわかれば苦労はない」と固く信じているタイプです。

 営業マンにとって重要な「どこのクライアントに何をいくら売った。」という実績の情報があったとします。定例の営業報告会で最初に報告されるのはこういった情報です。片道30分かけて営業に行き、客先で商談して帰ってくるまで約2時間半という仕事だとして、その道筋に飛び込み営業の出来る会社が10社あれば、社長としてはそちらがより重要な情報に見える場合もあるわけですが、実績の情報とは直接関係ないため、営業報告の中に10社の話は出てこないでしょう。それが見えない以上、営業マンの報告は単に報告に過ぎない、と切り捨てる経営者がいるのも無理からぬことです。

 Future SWOTは、10年後の未来を予測するために社員が持つ情報を活用しよう、という手法ですが、この説明に忌避感を持つ経営者は多かれ少なかれ似たような感覚を持っているようです。ここが「アイディア・マイニング」を説明するうえで一番難しい部分なのですが、「報告されずに眠っている有用な情報」を掘り起こしてでも活用する、というのがその設計思想なので、情報の質としては定常的な報告で上がってくるものとは全く違う、という点をぜひご理解頂きたいと思います。

「ソウイエバ、あの道筋には飛び込めそうな会社があったなあ。」「その会社のバナーなら、俺も違うところで見たぞ。」普段報告できずに眠っている情報が、絞り出すように上がってくるプロセスこそが「アイディア・マイニング」なのです。

会社の10年後を予測する、という枕詞は参加する社員の気持ちを楽にさせます。リラックスした状態で心の中を覗くことで、普段は忘れているような情報でも外に出て来やすくなります。それをまとめて可視化することで、最終的に「お客様の声に耳を傾ける」取り組みも強化されるのです。