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コラム

2018.12.04

SWOT分析がもたらす発想の力とは

 ビジネスコンサルティングの世界では、ややもすると手垢にまみれた感のあるSWOT分析ですが、正しく使えば依然として実にパワフルなツールであることに疑問の余地はありません。ただ残念なことに、用語解説などの簡単な説明資料にはよく「企業の内部環境における強み(S)・弱み(W)および外部環境における機会(O)・脅威(T)を抽出する」という説明とともに4象限の図だけが示されていたりするのですが、これでは全く分析の用に足りないのです。では何をどうすれば良いのか、あなたはこの使い方をご存知でしょうか?

 いくつかの異なるアプローチがあるようですが、最も一般的なものの一つはクロス分析と言って、「強みを機会に投入すると何ができるか」「弱みで機会を逃がさないためには何をしなくてはいけないか」「強みで脅威を回避するためにできることはなにか」「弱みで脅威を増幅させないためには何をしなくてはいけないか」という4つの視点に基づいて戦略案を策定する、という使い方です。

 これだけでも十分に強力なツールなのですが、あまり言われない話ながら、SWOT分析(のクロス分析)を行う上でその結果をさらに強力なものにするためのコツがあります。それは経営理念・経営目標を再確認したうえで分析に臨むという段取りを踏むことなのです。

 こうすると、導き出すべき戦略案が何のためのものなのか、について参加者の理解にブレが少なくなります。そもそも、企業は何のために存在しているのか?そして戦略は何のために必要なのか?このあたり、本来は自明であるべき命題でありまして、それは全く経営理念の実現と経営目標の達成のため、以外の何物でもないはずなのです。いや、自分の会社は違う、という方がいたら、実はむしろそちらの方が大変かもしれません(この件は別の回にじっくり論じたいと思います)。

 いま、明快な経営理念・経営目標を確認できたと仮定します。そのうえで経営環境から強み(S)・弱み(W)および機会(O)・脅威(T)の4要素を抽出できたとすると、組み合わせによってさまざまな戦略案を想定することが可能です。これを社内のグループ討議で実施したとしましょう。

 特に強み(S)については、普通の中小企業であっても1つや2つだけという例は極端に少なく、5つや6つはあたりまえ、どうかすると10以上も出てくる場合が多いのです。そこに今、仮に3つの機会があったとしましょうか。もしも強みが10あると、そこで吟味されるべき戦略案は10×3=30通りにもなってしまい、中身の確認だけでかなりの時間を費やすことになってしまいます。

 ここで思い出していただきたいのがパレートの法則と言う考え方で、全体の2割を占める要素が全体の8割に支配的な影響を及ぼすというものです。10種類の商品を扱っている店なら、そのうち2種類の商品だけで売り上げの8割を満たしている、というようなイメージです。

 それをSWOT分析にも当てはめると、たとえば10件ある強みでも、最も強い2つをチェックすれば全体の8割をカバーしたことになる、というふうに整理できるのです。それなら2×3=6通りの戦略案を比較検討することで足りるのですから、しっかりと時間を使って十分な検討をしていただけます。

 この分析が力強いのは、まず「強み(S)を機会(O)に投入する」仮説を吟味することによって、参加者と成功のイメージを共有することができる点です。しかも要素の数は通常だと強み(S)が最も多くなりますので、たとえパレートの法則を当てはめてもこのプロセスに掛ける時間が一番長くなります。

 議論はなんでもそうだと思うのですが、成功のイメージについて話す時間が長くなると、ポジティブな発想がさらに新しい発想を呼び、全体的な高揚感をさらに強めるということになる場合が多いのです。集団催眠、というと間違ったイメージにつながりかねませんが、みんなで一緒にやる気になる、というような雰囲気が醸成されるのは間違いありません。むしろそれこそが、社内でSWOT分析を実施することの重要なメリットなのです。

 あなたの会社では、グループでSWOT分析を実施してみたことがありますか?

2018.11.13

マズローの欲求五段階説はこう使え!

欲求とモチベーション管理の世界ではあまりに有名なマズローの欲求五段階説ですが、それだけ説明すると「だから何だと言うんだ?」的な消化不良感にかられることはありませんか?

そもそも、人間の欲求について理解するのにどうして「所属の欲求」だの「自己実現の欲求」だのが出てくるのか?食欲や睡眠欲、性欲のほうが大切だろう、と思った方もいるのではないでしょうか。ヒントは、どのような背景でこの説が世に出たかにあります。

アブラハム・マズローは心理学者だそうですが、1970年に亡くなるまで、彼を有名にしたのは経営管理に関する著作でした。特に「完全なる経営」が有名ですが、一連の著作は心理学に特化したものというよりは、経営管理、特に労務管理に関する学説として重宝されたのです。

それでもやっぱり、社会的欲求は自己実現の欲求より下なのか?といまいち割り切れないことへの明快な回答にはなっていませんよね。

私はこの学説を「下層に行くほど欲求は強いが、上層に上がるほど満たされた時のモチベーションが高くなる」と説明しています。そうすることで、現場におけるこの学説の使い勝手が一気に良くなるからです。

実際に見てみましょう。最下層にあるのが「生理的欲求(生存の欲求ともいう)」ですが、これはトイレに行きたい欲求を想像いただければ判ると思うのですが、あらゆる欲求の中で最も強い(トイレに行く渡り廊下に手すりがないなど、たとえ十分な安全が担保されなくても、トイレには行きたい)ものだという説明には納得感が高いのではないでしょうか。

一つ上の層に「安全の欲求」が来ます。これもとても強い欲求です。治安の悪いところには居たくない、常に安全でいたいと願う心ですが、生理的欲求とともに、満たされたからと言って必ずしもモチベーションが高くなるというものでもないと言えます。

その一つ上が「所属と愛の欲求」です。このあたりになると、満たされるとやる気が出そうなのは何となく想像がつきますね。そして「承認欲求(社会的欲求、ともいわれる)」がその上に来るのですが、平たく言うとどこか組織に所属していて、そこで慕われている状況があれば大丈夫、そこで手柄を立てればさらに良い、みたいな感じです。つまり、しっかりしたところに勤めていて、同僚からも愛されていて、そこで手柄を立てればそりゃあモチベーションは上がるでしょうって、そんな感じです。でも、特に手柄を立てるなんていうことは「できたらいいね」的な願望に終わることも多い、つまり欲求としてあまり表には出てこない、ということです。

いわんや「自己実現の欲求」は、もしも叶えばそれは盛り上がると思いますが、そもそも夢の話ですから常に叶うとは限らない。そうなると人間は自制的になるもので、顕在化した欲求としてこの層が表に出てくるということはめったに無い訳です。

ではどうすればよいか?という問いの答えは意外と簡単で、つまるところ周りがお膳立てしてあげればよいのです。新人を、ほめて伸ばすというやり方も、そう考えると実はとても理にかなったものであることがわかります。

職場のみんなでお膳立てして手柄をたてさせて、褒めてあげればそれはもう、所属と愛と承認がワンパッケージで与えられるわけですから、舞い上がらない方がどうかしている、と言う具合です(某テーマパークのアルバイト教育はこのあたりにヒントがあります)。ついでに自己実現の場でも与えられようものなら、「一生社長についていきます!」というくらいの話になっても、あながちおかしくないのです。

ポイントは、めったに表に出ない自己実現の欲求がいったい何なのか、慎重に探り当てることだろうと思われます。そのために必要なのが人間観察とコミュニケーション、ということになりますね。なるほど、社内コミュニケーションにはそういうメリットもあったのか、とご納得いただけた方、自社の若手に対する動機づけの参考にしてみてください。

あなたの会社では、若手社員を上手く動機づけられていますか?

2018.11.06

社内コミュニケーションの進め方:「メシでも食おうか」を切り札にするには

 社内のコミュニケーションを円滑に行うための有効な手段の一つが食事を一緒に取ることである、と言う考え方に異論を唱える方は多くないと思います。部・課ごとの昼食会や、若手の朝食勉強会、忘年会・新年会に歓送迎会など、会食は会社生活と切っても切れないものです。でも、サシで食事をするとなるとその意味は少し変わってきます。特に、社長から「メシでもどうだ?」と言われたりすると、つい身構えてしまうのが社員の人情ではないでしょうか。
 
 食事の誘いもそうですが、普段やりつけていないことをされると、された相手は当然ですが身構えます。そうすると、食事の最中も誘われたことの意味を考えたり、問いかけに対して慎重になったりと、せっかくの食事がホンネを語る前に終わることにもなりかねません。

 この段差を乗り越えるためには、社長との食事を普段のことにしてしまえば良いのです。そうは言っても忙しい社長にとって、なかなか社員とサシで食事を取る機会を設けるのは難しいと思います。そんな場合の対策として提案したいのが「ゆるい定例化」という方法です。これはたとえば「毎週決められた日に社長が社員と昼食を取る、それは社内コミュニケーションの円滑化が目的で、特にそれ以上の目的はない」という趣旨のお触れを出しておく、というもので、予めスケジューリングしたりせず、運用の中でこなしてゆくという方法です。

 毎週火曜日はなるべく社員と昼食、と決めた社長がいるとして、具体的な予定を決めているわけではないので、社員全員に振られる週もあるかもしれません。また、突発的な仕事が入って実施出来なかったり、社外の用事で時間が取れなかったりするかもしれません。それはそれで良いのですが、ここで大事なことは「実績の振り返り」で、毎月最後に今月は何回食事できたか、そこで何が得られたかを、社長自ら振り返ることなのです。

 振り返って確認できたことは、基本的には社内で共有するのが良いでしょう。むろん、社員のプライバシーに関する情報などは多少の配慮が必要だと思いますが、社長として得られた気づきや新たな発見は、社内で共有される意味のある情報であることが多いのです。

 慣れないうちはどうしても社長の独演会になってしまいがちで、月末に振り返ると実は何も得ていなかった、ということも起きがちです。はじめのうちは仕方がないのですが、社長の側に「コミュニケーションは双方向であるべき」という思いがあれば、そのうち自然に社員からの発信がなされるようになるはずです。

 このやり方が良いのは、「ゆるい定例化」を実践しておくことで、本当に一対一で話す必要がある場合でも、社員に身構えられることなく食事の機会を持てることです。そのためには、「ゆるい定例化」が形骸化しないよう、ある程度の頻度で社員とサシの食事を実施しておく必要があります。少なくとも月イチ、できれば2回以上実施しておくと、空手形に終わることなく社員とのホットラインを確保できます。
 
 あなたの会社では、社長と社員がサシで話せる関係が構築されていますか?