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コラム

2019.01.15

バックキャスティングという考え方

最近、テレビや新聞などでよく「バックキャスティング」というコトバをみかけるようになりました。その意味するところは、ゴールを設定したらそこから逆算して、いつまでに何が出来ていないといけないか、を見積もったうえで全体の工程を考える、ということのようで、作成されたスケジュールは「逆算工程表」などと表現されたりします。この考え方には、単なる工程予測以上の重要な使い道があるのですが、それは何だと思いますか?

バックキャスティングの反対語はフォーカスティングだそうです。フォーカスト、とは天気予報(weather forecast)のように「予想する」すなわち現在を起点にして将来どうなるかを見積もる際に使われる概念です。いわば積み上げなのですが、バックキャスティングはゴールが決まっていて、それを起点に後ろ戻りの積算を行う点が大きく違うということですね。

このように対比的に考えるとよくわかると思うのですが、フォーカスティングの場合は予測の積み上げである分だけブレやバラつきが生じる可能性を内包しているのに対して、バックキャスティングの場合はゴールが達成できている状況を実現する「そのためには」ということで、必要十分条件を必ず満たすことを求めてくる分だけブレやバラつきの発生が許されなくなるのです。

いずれも、未来を考えるためのアプローチであることに違いはないのですが、フォーカスティングがある程度の柔軟性をはじめから織り込んだものであるのに比べると、それを極力排除しようとするバックキャスティングの取り組みは、いざ実践しようとすると大変味気ないものになるのだろうな、ということが見えてくると思います。

本来プロジェクトというのは、やってみると思っていたことと違うことが起きるのが当たり前の仕事なので、その中で思っていたとおりの工程を実現しなくてはならない、というのは大変厳しい話なわけです。

そこでご想像いただけると思うのですが、バックキャスティングで描いた工程表は、実績との差異を見極めるための基準点としてお使いいただけるという点が「重要な使い道」だということです。「ゴール達成のためには今日までにこれとこれが出来ていないといけない(バックキャスティングにより算定された必要十分条件)のに、実際にはこれとこれしかできていない(実績)。その差はかくかくしかじかの理由による(差異分析)。」という情報を関係者間で共有できれば、プロジェクトの進捗に関する危機感も同時に共有できるわけです。差異分析が吸収できないほど大きくなれば、ゴールを見直す必要性が高まります。そのうえで再度バックキャスティング工程表を引きなおし、プロジェクトを進めてゆく・・・。

さまざまな業界のさまざまな現場で、プロジェクトと名の付く仕事が進められていると思います。その中で意図せずに同じことをしていたという方もいらっしゃるかもしれません。そうであれば次の機会からは、意識的にバックキャスティングによる工程見積もりと、差異分析による見直しを制度的に取り入れてみてください。関係者間の摩擦がぐっと少なくなること請け合いです。

2019.01.08

絵に描いた餅を現実のものにするには

あけましておめでとうございます。年末のお休みからようやく復帰いたしました。今年もFuture SWOTをどうぞよろしくお願いいたします。

大学の授業や企業の研修で課題解決型のワークショップを実施すると、解決策について参加者からはさまざまなアイディアが出て来ます。多くの場合、グループワークを通じた精製工程を経て、数々のアイディアは整理統合され(あるいは淘汰され)、課題に対する対策として発表されます。ここまではよくある話でありまして、いわば「絵に描いた餅」の段階だと言えます。良い案であれば企業では特に、それを現実化することが求められるのですが、ではどうすれば「絵に描いた餅」をうまく現実化できるのでしょうか?

むろん、責任者による意思決定を経て「これを現実化せよ」という業務課題になってくれることが前提の話ですが、業務課題になった途端、担当者はさまざまな制約条件との格闘を強いられることになるはずです。なぜそうなのか?についてプロジェクト工学の前田考歩さんは、以下のような視点を提供してくれています。

① やったことのない仕事の勝利条件は事前に決められない
② プロジェクトにおいては、こうあれかしと考えて立案した施策が想定を超えた結果をもたらす
③ プロジェクトの課程における諸施策の結果もたらされる状況は、即座に次の局面における制約条件となり、時にプロジェクトの勝利条件そのものの変更すらも要求する

ちょっと難しいコトバが続きましたが、勝利条件というのは「要はこうなりゃ成功」という、高跳びのバーみたいなものを想像いただければと思います。で、施策とは何か資源と時間を使って能動的に行う作業のことで、とりあえずゴールを決めていろいろやっていると、予期せぬ展開が起きて、その結果「要はこうなりゃ成功」と思っていた条件すら満たせなくなることがある、と言う話です。

ではどうすれば良いのか、ということですが、詳しくは前田さんの「予定通り進まないプロジェクトの進め方」(宣伝会議 刊)と言う本をお読みいただくとして、Future SWOT的に言うと「絵に描いた餅」のあり方をしっかり議論して、最低限どこまで実現しなくてはいけないのかを確認しておく、と言うことに加え、実施段階での内的コミュニケーションを徹底させることによって、担当者がいち早く危険因子を見つけて除去できる体制を取る、ということになりますね。そもそもFuture SWOTには内的コミュニケーションを促進してくれる効能がありますので、まずこの部分をしっかりと作り込んでおいてから現実化のプロセスへと入って行ける分だけ、トラブルへの耐性を高めた対応が可能となるのです。

2018.12.18

議論の中身を一目瞭然に表現するために

 仕事をしていると時々、ややこしい話をそれでもまとめて他人に説明しなくてはならない羽目に陥ることがあったりしませんか?個人が考えたことを表現するためのツールとしては、マインドマップやマンダラチャートなど、ビジュアルに訴える手法が人気です。さらに最近ではパワーポイント(マックならキーノート)の作図機能のおかげで、時間さえかければ込み入った話を一目瞭然に表現することができるようになってきました。ところが同じことをグループワークでやるにはどうすれば良いか?と言う部分では意外と進歩していなかったりします。

 古典的には表やグラフを使ったり、箇条書きにしたり、模造紙に小学生の壁新聞よろしくレイアウトしてみたりと、さまざまな工夫がありますね。ポストイットを模造紙に貼ってあれこれ組み合わせを変えてみる、といった手法はよく使われていると思うのですが、「グループ」ワークと「パーソナル」コンピューターが今一つ相性が良くないことも手伝って、この世界はなかなかアナログなまま取り残されている感じです。もう少し時代がニーズに追いついて来れば、巨大なタッチスクリーンが一般化するのかもしれませんが、今のところ模造紙・ホワイトボードとマーカーが絶滅しそうな気配はありません。

 でもデジタル化されていないからと言って、グループワークを一目瞭然に表現することの重要性が否定されているわけではありませんで、いわゆるブレーンストーミングのプロセスを後から共有するなど、できたら良いのにというニーズは確実に存在しています。人的に余裕のある職場であれば、パソコンを抱えた書記を一人立てる、という方法もあると思いますが、常にそうできる職場は必ずしも多くはないでしょう。

 ネットワークを使って、議論しながら皆が自身のパーソナルデバイスに向かって同じ素材を加工しあう、というソリューションもないわけではありませんが、やはり一つのホワイトボードに向かって議論するのとでは刺激の度合いが違ってきます。

 議論を煮詰めながら、同時に一目瞭然の形に表現するための手法として、その昔KJ法やNM法という「発想法」が人気を博した時代がありました。NM法は連想による発想を軸としますが、ビジネスで使うKJ法は議論で出された「似たもの情報」の大意要約を繰り返し、情報相互の位置関係をビジュアルに表すことによって「要は何が話されたのか」を表現しようとする手法です。

 全体観を押さえながらも「要は何が話されたのか」を煮詰めて共有できるという部分において、デジタルなソリューションとは一味も二味も違う長所を持っているKJ法ですが、人知に負う部分が大きいことに加えて模造紙やラベル、ゼムクリップなどのツールがとってもクラシックなこともあってか、半ば古典芸能化した感があります。いわば算盤と同じような運命をたどっている、ということでしょうか。

 手法としてのKJ法は使われなくなったかもしれませんが、大意要約を繰り返すことで要旨を明らかにしてゆくというアプローチそのものは決して陳腐化したわけではありません。むしろデジタルの世界でこそ、分かりやすく資料をまとめる上でのコツとして、その重要性は増しているのではないかと思います。大意要約に長けたモデレータがまとめるグループワークは、その品質においてそうでないグループのものとは全く違った輝きを見せてくれます。

 あなたの会社では、社員の大意要約の能力を重視していらっしゃいますか?