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コラム

2019.03.07

アイディアを自在に扱う

仕事でピンチを迎えて打開策を考えなくてはならない状況で、「考えに詰まる」とか「アイディアが出てこない」という場面を経験したことのある方は少なくないと思います。逆に、風呂に入っているときや通勤電車の中などで、ヒラメキが湧いたり解決策のヒントが「降りて来た」という経験をしたことのある方もいらっしゃるのではないでしょうか。アイディアは必要な時に詰まり、必ずしもそうでないときに湧いて出る、どうしてそんなことが起きるのでしょう?

頭脳の中で「思いつき」「発想」、はいつどのようにして生まれるのか?これまでさまざまな研究がなされてきているようですが、そのメカニズムを科学的に解き明かしたという話はまだ聞いたことがありません。それでも日々、何気ない言葉のやり取りや目に映る様々な景色から、人はアイディアを思いつくのです。最近の朝ドラでは、インスタントラーメンの開発者が妻の上げる天ぷらからヒントを得て製法を考え付いたというエピソードが紹介されていましたが、これこそが象徴的な話です。

他方で、本当にアイディアを欲している人からすると、いつまでも思いつきが降りてくるのを待っているというわけには行きません。事実、ビジネスの世界を中心にアイディアを意図的に生み出す取り組みは世界中で長年続けられてきた実績があります。

連想的発想法としてのシネクティクス法やNM法、構造的に事実関係を可視化するKJ法、経過する時間と場所から問題点を洗い出すKI法、パターン分析に基づく発想法であるTRIZ法、論理的に段階を追って考えを詰めてゆくKT法など、体系化された技法は受け継がれ、世界中のさまざまな場面で使われています。身近なところでは、オフィスでよくつかわれるブレーンストーミングや、大人数のワークショップで活用されるワールドカフェなども、発想を刺激するという意味では有効な手法です。

時代は変わり、現在はたとえば人工知能によるビッグデータの観察など、人間の能力が及ばないスケールの取り組みに焦点が移ってきています。それはそれで素晴らしい発展なのですが、そもそもビジネスのとある場面で求められる小さなアイディアを扱うにはやや器が大きすぎるという難点があります。いずれそのうちAIが発達して、日常の細かなアイディア出しまでスマホが面倒見てくれるようになるのかもしれませんが、とりあえず今日そのようなサービスはまだ存在しないわけですから、それは人間が額に汗して取り組まなければならない課題なのです。

私が提案しているFuture SWOTも、参加者が自社の未来について考えを出し合う手法ですから、広くとらえれば発想法の一類型として整理できるのかもしれません。ただ、組織の未来を考えるためだけに開発された専門的なツールですから、その意味での汎用性はありません。それでも普通の企業をはじめ、役所や病院など、さまざまな組織でお使いいただけるように作られていますので、未来について考えるというテーマであれば、かなり広い範囲で活用いただけます。

おかげさまでこのほど、入門書の出版も決まりました。これを機に幅広い分野で普及を進めて行きたいと考えています。会社の未来を考えるために、アイディアを縦横無尽に駆使できるツールFuture SWOTを、どうぞよろしくお願いします。

2019.02.26

発想と探鉱は似ている

その昔、発想法に関するビジネス書がブームになった当時から、私はさまざまな手法とその裏付けとなる理論や考え方に一方ならぬ興味を抱いてきました。たとえば中山正和さんが提唱したNM法は連想に基づいた発想法ですし、同様に類比発想を体系化したものとして、アメリカ発のシネクティクス法があります。

それに比べると、川喜多二郎さんのKJ法は、情報のとりまとめと論理的な位置関係をビジュアルに整理する点で優れていたと思うのですが、実は非常にロジカルで、必ずしも連想の力に頼らない手法です。ただ、そのいずれもがデジタル全盛の今日では人気がなく、廃れてしまったような印象があります。それはどうしてなのでしょうか?

特に連想を使ってアイディアを探る方法は、単なるイメージに過ぎませんが、鉱脈を探り当てようとする探鉱に似ているような気がします。連想によるアイディア探しもそうですが、あちこちの地層を探って最後にたどり着くというプロセスが直接的でないというか、不要な回り道をしているイメージがあってスピード感に欠けるあたりがデジタル世代には受けないのかもしれません。

確かに、連想のための連想を冗長に続けていられるほど現代人は暇ではないわけで、そう考えると何人もの関係者が一堂に会し、一定の時間を作業に取られるという方法は、それだけでも敬遠されてしまいそうです。

でもそれは、アイディア探しの価値が下がったとか、現代社会ではアイディアを出さなくても仕事が進むという話ではないだろうと思います。確かに、最も手軽な発想法であるブレーン・ストーミングは今日まで脈々と使われ続けています。冗長性を回避しつつ、時間効率を上げるような手法が開発されれば、現代社会においてもその有用性は十分価値を持つものなのではないか、私はそんなふうに思っています。

Future SWOTカードゲームは、全く手掛かりなしで取り組む発想法に比べるとカードのメッセージに答えてゆくという決まったプロセスを経る分だけ冗長性が軽減されています。出たアイディアを仕分けたうえでSWOT分析をかけるという流れも、時間を節約するための対策と認識いただいて間違いはないと思います。

いかんせん、現状では関係者が一堂に会してゲームをする必要性があるため、忙しい現代人にとって理想的な手法だとまでは言えないのですが、このあたりもネットアプリで同じようなことができるようになると空間的な乖離は埋められるようになりそうです。そのくらいになると、たとえば東京本社と北海道の工場と鹿児島の研究所で、同じセッションを通じて相互理解が深まる、などと言った場面が出てくるのかもしれません。そうなる明日をぜひ夢見たいと思います。

2019.02.05

意識と下意識

ちょっと昔になりますが、スポーツ選手やビジネスマンに支持された「メンタル・マネージメント」という名著がありました(今でもネットの古本販売サービスなどで入手可能だと思います)。

射撃でアメリカのオリンピック選手だったラニー・バッシャムと言う人が書いた本ですが、その言わんとするところは「人間は一時に一つの事しか意識できない」「それ以外の知識や概念は下意識へと追いやられる」という考え方です。

下意識とは、普段は忘れている知識みたいなイメージで、パソコンのメモリが一杯になると一時的にハードディスクへ書き出される「仮想メモリ」のようなものだと理解しています。

典型的なのはゴルフですが、おしなべてスポーツが初心者にとって難しいのは、この「一時に一つの事しか意識できない」という制約条件があることによります。

競技特有の体の使い方や、ボールを上手く打つためのコツなどは、意識すべきポイントが次から次へと入れ替わるため、意識を目まぐるしく更新させる必要が出てくる、そうすると脳の処理スピードがプレイのスピードに追い付かなくなる、ということです。

バッシャムが言うには、練習をひたすら繰り返すことで、当初は意識していた体の動きを体に覚え込ませることで、下意識レベルでも動きを上手くこなすことができるようになる、名選手は皆そうやってコツをものにしている、ということです。

ゴルフで言えば「スタンスはスクエアに」「脇を絞めて」「両腕の三角形は崩さずに」「左手がスイングをリードする」「頭を残して」など、初心者にとってはどれも一つずつ意識しないと上手くできない一連の動きを、名選手は体(下意識)に覚え込ませている(ルーティン化している)ため、特に意識する必要がない、その分だけ上級者はたとえば風や芝目などに意識を向けることができる、というお話です。

ビジネスでも似たような話があると思うのですが、たとえばB to Cビジネスなどでは、お客様の来店からお買い上げまでのプロセスは多くの場合ルーティン化されていて、そのままでは誰の記憶にも残らない、という事例も少なくありません。実はこれこそが、意識の向けどころなのです。

ゴルフの上級者が風や芝目に意識をやるように、たとえばお客様の表情に気を配る役目の人を配置することで、ルーティン化により見過ごされている景色の中に対応すべき課題が潜んでいることが浮かび上がります。

そうやって情報を掘り起こすことで、自らのビジネスの課題を見つけ出し、明日への改善に生かしていただきたいと思います。社内情報の掘り起こしに困ったら、ぜひ当社にご相談ください。