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コラム

2019.05.17

国語力は組織力?

 Future SWOTカードゲームは、「自社の10年後」についてのビジョンを共有するためのツールです。カードには同じ質問が書いてあるため、「誰がやっても結果にバラツキが生じない」ことをセールスポイントにしています。ところが実際にやってみると、ゲームの成果として得られるビジョンについて、切れ味の鋭いものから何を言っているのかよくわからないものまで、だいぶ違いが出てきてしまいます。これはどうしたことなのでしょうか?

 最大の理由は、参加者の資質による違いです。本気で将来を担う期待の若手と、将来のことなどあまり考えていない問題意識の薄い人とでは、同じ問いかけに対する反応の違いも月とスッポンです。なので、参加者の選定には細心の注意を払いましょう(逆に、参加者の資質を問わず実施することで、広く問題意識を呼び起こすという使い方もあるので、その場合は成果に目をつぶる必要性が出て来ます)。

 今一つの理由は、「本当に会社の未来が難しい」という場合です。たとえば人口減少が続く地域の公共交通機関など、いわゆる限界産業・衰退産業についてのセッションでは、さすがのFuture SWOTも明るい未来を描けないという場合が出て来ます。もっともFuture SWOTを実施しようとするからには、どこかに自社の可能性を感じている≒限界産業ではない場合がほとんどだと思われますので、この要素が該当する場合は多くないと思います。

 もう一つ、主催者側に起因するものとしては「ファシリテータの国語力が弱い」という理由があります。つまり、参加者の口からある程度の情報は出てきているのに、発言内容を上手く整理できなかったり、重要な発言のカケラを上手く拾えなかったり、ということが発生しうるのですが、そうなると折角参加者から発信された情報が成果につながらないことになってしまいます。

 セミナー等で私はいつも、Future SWOTの成否はファシリテータの国語力にかかっている、と申し上げています。人の発言をよく聞く力、大意要約をする力、重要な情報を抜き出す力、組み合わせてわかりやすく表現する力などがそれにあたります。どれも小中学校で国語の力として評価された項目です。学歴や職位は全く関係ありませんが、この「国語力」だけは本当に重要な力です。Future SWOTをやってみようとされている方々には、ぜひこの点を心してファシリテータの人選を行って頂きたいと思います。

2019.05.07

人間はなぜ未来を語るとモチベーションが上がるのか

 Future SWOTは、10年先という未来のことを考えるゲームです。これまでに実施したワークショップの成果の中で、どの事例でも参加者の表情が確実に明るくなるという変化が観察されました。それはどうしてなのでしょうか?

 Future SWOTだけでなく、人間は未来を語ることでモチベーションが上がる生き物らしいです。いささか古い記事ですが、2018年2月13日の日経新聞・経済教室に掲載された記事には、将来世代のことを考えたディスカッションに参加した人の感想として、「『現在世代の自己と将来世代の自己を俯瞰し、調停する思考ができた』と言い、そのように思考することに喜びを感じると答えた」との記述があります。
https://www.canon-igs.org/column/180220_kobayashi.pdf

 現在そして未来につながる時間のことを自分事として意識できると、そこには高次の自己意識が芽生える、みたいなことなのかもしれません。でも、Future SWOTが評価されているのはそこまでの長い時間軸によるものではありません。

せいぜい10年後の話に過ぎないのですが、一つ確実に言えることは、いずれも自分事についての議論だという前提で話をしてもらっている、ということです。Future SWOTが求めているのは「10年後の自分が置かれた立場を可視化する」という取り組みに他ならないのです。

若手・中堅社員については、10年後の自分たちが目指している方向性について同僚たちと考えをすり合わせることができたこと。参加者の表情を明るくしたのは間違いなくそういう部分だったのではないかと思います。

では、シニアな参加者についてはどうだったのでしょうか。ここから先は私見になりますが、私は以下のような考え方を持っております。

これは一つの仮説に過ぎませんが、日本を含む世界各国で止まらない少子高齢化について、現代の生産世代は、資源多消費型の現代経済が将来世代の資源までを食いつぶしている≒将来世代は私たちより厳しい環境下に置かれる、という認識を広く共通して抱いているのではないか、と直感的に感じているところがあります。

これは何も少子高齢化に止まらず、会社経営についても同じような側面があり、やれコンプライアンスだの働き方改革だのと、昔に比べてだんだん世知辛い環境になってきていて、ごく普通に自由裁量の利いたかつての雰囲気はもうなくなってきている、というイメージとも相通じるところがあると感じています。

そんな日々を送っている方々からすると、10年先にどう会社をつないで行くかというテーマで議論に参加できることは、罪滅ぼしとまでは言わないまでも、今自分がやっていることの正しさを確認するためのプロセスとしてプラスに働いた、ということなのかなと思っています。日経の記事でも、将来のことを俯瞰できることに「喜びを感じた」との記述がありますが、Future SWOTがもたらす効果も同じではないかと思うのです。

そう考えると、もしも私たちが将来世代のことまで勘定に入れた資源配分を実現できたとしたなら、少子高齢化は根本的に解決出来たりするのかもしれないとさえ思えてきます。Future SWOTを手掛けていると、そんな方向にも考えが向いてくるのはたぶん何かの余禄でしょうね。

理由はどうあれ、Future SWOTワークショップを実施して自社の未来を考える機会があると、確実に参加者の顔は晴れ晴れとします。私は、それだけでもカードゲームを実施する意味があるのではないかと思うのですが。

2019.04.30

未来は過去からしか語れない

 Future SWOTの話をしていると、時折「ソウイエバ記憶と未来のSWOTはどこでどうつながるんですか?」という質問をお受けすることがあります。確かに、ソウイエバ記憶とは下意識の底に深く沈んだ記憶のカケラですから、ちょっと考えてもなかなか未来の姿にはつながりそうにありませんよね。一見正反対に見えるFuture SWOTとソウイエバ記憶はどこでどうつながっているのでしょうか?

 この話については、未来の事を考えるときに誰もが必ず過去のデータをヒントにしているのだということをまずご認識いただきたいと思います。Future SWOTも「人間は過去の記憶からしか真剣に未来を考えられない」、という考え方に基づいて作られています。

 「10年後どうなるか」という雲をつかむような話を向けられると、人間はそのキーワードについて自分が知っていることを検索し始めます。近い記憶から遠い記憶へ、連想から二次連想へと検索の裾野は広がり、運よくヒラメキが生まれるにせよ苦し紛れにせよ、最後は絞り出すようにして何かコメントしようとします。その際に、関連した記憶があれば当然詳しく思い出そうとするわけです。

 悪く言えばFuture SWOTは、関連する情報について心の中で「当たるを端から」チェックする、という方法でもあるわけで、アイディア・マイニングの成功確率は高くないとお伝えする理由がそこにあります。元々、自発的に仲間とは共有されることなく心に沈んでいた記憶ですから、キラリと光る可能性は実は決して高くはないのです。

 それでもあれこれ突いていると、何かの拍子にキラリと輝く原石を掘り当てたりする場合があります。ざっくり言って、一回のセッションで出てくるコメントの8割は使い物にならないでしょう。2割くらいは「まあ聞いてやろうか」というレベルのものが出て来ます。本当に光る原石は、一回のセッションで一つあるかないか、というところだと思います。その多くが、実は発言者の心に沈んでいた過去の記憶と何らかの繋がりを持つ情報なのです。

 「赤鼻のトナカイ」というクリスマスソングがありますが、誰もが知っていたはずの役立たずな情報(トナカイの鼻は赤い)が、特殊な環境では優位に働く(年に一度、クリスマスイブの夜空を飛ぶサンタクロースにとっては照明代わり)、というようなことがあります。そこまで劇的でないにしても、組織の中には忘れられていた強みや、過去の失敗から得られたはずの教訓など、「ソウイエバ」と思い出すことで価値が出てくる情報は思いのほか沢山蓄積されています。そして、もうお分かりだと思いますが、その情報を活用する舞台はといえば、未来のビジネスチャンスをおいて他にはないのです。